閉め切っても適度な光を取り込める襖
閉め切っているのに隣の部屋の明かりが取り込める。「源氏襖」と呼ばれるこの襖は、襖の一部に障子が組み込まれています。奥に長く部屋が続いている間取りの家では、奥の部屋には光が入りにくくなります。それでも各部屋は襖でしっか仕切りたい。そんな場面で活躍するのがこの源氏襖です。源氏襖は、障子を取り入れる位置によって様々な種類があり、代表的なものに中抜襖、御殿襖、長崎襖などがあります。障子よりも防音性に優れていてプライバシーを守れる事と、障子部分の大きさや位置によって取り込む光の量を調整出来るのが特徴です。
縁のない襖
縁を付けない襖で坊主襖という別名をもつ太鼓襖。縁は襖の紙の部分に手あかをつけないという役割もあるのですが、太鼓ふすまは上下に薄い木を付けることで対応しています。とはいえ、一般の縁のある襖に比べてどうしても強的に劣るため、茶室の出入り口など、使用頻度が高くなく、デザイン性が重視される限られた場所に用いられるのが普通です。
和と洋をつなぐ襖
基本洋間の住宅で、リビングの隣に一角だけ和室のスペースがあるというお宅がよくありますが、こうした和室と洋室との間仕切りに使われるのが戸襖です。名前は襖ですが、合板(ベニヤ板)で出来ており、本来の襖とは別物です。和室側にはベニヤ板の上に襖紙を張って見た目を襖のように仕上げ、洋室側にはクロスを貼ることで引戸のように仕上げます。和洋どちらにも合う化粧合板で両面を仕上げ、和室側にだけ襖に付けるような縁をつけることもあります。和室と洋間のそれぞれの空間を、和室の雰囲気を壊さず、洋間に違和感を持たせずにつなぐ、便利な襖です。
特殊な動きをする軸廻し襖
特殊な襖の代表が、この軸廻し襖です。使われる場所は、仏間の仏壇置き場(床の間の横の仏壇を仕舞えるスペース)の扉という、 限られた場所です。この襖は、観音開きの扉のように手前に両襖を開いた後、仏壇の脇に設けられた専用の戸袋に差し込むようにして収納できるようになっています。基本的に仏壇には扉が付いているため、仏壇の扉と軸廻しふすまが干渉しないようにするためにこのような仕様になっているのです。
サイズによる呼び名
●七(ごしち) 高さが5尺7寸のもの
●五八(ごはち) 高さが5尺8寸のもの
●中間(ちゅうま)半襖と五七の間の大きさ。高さが3尺以上5尺くらいまでのもの
●半襖(はんぶすま) 高さが2尺以上3尺くらいまでのもの
このほか、最近の生活様式の変化により、和洋折衷の住宅などで、洋間と和室との間に使われる、高さが5尺8寸を超える丈長(たけなが)と呼ばれる襖もあります。なかでも2m丈の建具に合わせて、襖の高さがそれ以上になるものも増えています。
襖の幅による呼び名
襖は柱と柱の間の寸法(内法寸法)に入る本数によって、次のように呼ばれます。
●2枚立(にまいだち)
柱と柱の間が2枚の襖が並ぶ幅のもので、「引き違い」とも呼ばれます。特に1間の幅のところの入るものを間中(まなか)といいます。
●4枚立(よまいだち)
柱と柱の間に4枚の襖が並ぶ幅のもので、内法が9尺の場合は「九四(きゅうし)」または「9尺4枚立」、 2間の場合は「2間4枚立」または「二間(にけん)」、同じく、2間半の場合は「2間半4枚立」、または「二 間半(にけんはん)」、3間の場合は「3間4枚立」または「三間(さんげん)」と呼ばれます。
用途別の呼び名
襖は、その用途によっても呼ばれ方が違います。
●間仕切り(中仕切り)
部屋と部屋とを仕切るために使われる襖。いわゆる普通の襖です。襖の両側が部屋に面するため両面に上貼りが貼られます。そのため、「両面」「両面貼り」とも呼ばれます。
●片面張り
押し入れの様に片側だけが部屋に面する所に使われる襖で、片面だけに上張り(裏は裏張り)が用いられているのでこう呼ばれます。
●天袋・地袋
床の間の脇床の上段・下段に取り付けられる小襖のことです。上段を天袋、下段を地袋と呼びます。
古来から自由度抜群の間仕切り
1000年以上も前に、移動式の間仕切りというコンセプトで誕生した襖。普段は大空間として利用している部屋を細かく間仕切る、逆に、複数の小空間を一時的に大空間としてつなげて使う。また、そこに住まう人の人数や使用方法に合わせて部屋の間取りを変える。こうしたことを可能にする自由度の高さから、生活様式がどんなに変化しても、襖は生き残り続けてきました。
いまや、結婚式やお葬式など人が集まる行事を襖を外して自宅で催すという家庭は少なくなってきました。しかし、LDKとひとつづきになった和室があって、時には襖を外して大きなリビングとして使ったり、来客があれば襖を閉じて客室として使ったりと、間仕切りを自由に移動出来る利便性は今も生きています。洋製品では、アコーディオンカーテンがその代わりを担いますが、襖の自由度には及ばないのではないでしょうか。
襖は「空気清浄機」
内部構造が段ボールや発泡素材の量産襖では駄目ですが、昔ながらの和襖には、呼吸して空気をきれいにする働きがあります。和襖はその製造工程で、周囲だけに糊を塗り、ウケ紙と呼ばれる下地の紙を貼り釘で留めます。この時中央部は浮いた状態になりますので(浮かし貼り)、その上に襖紙を貼ると、内部に空気の層ができ、呼吸する構造となるのです。合わせて、保温性、調湿性といった性能も持つ事になります。梅雨時、襖がたるむのを見た事はありませんか?あれは、梅雨時の湿気を吸ってたるんでいるのです。乾燥させると、またピンと張って元通りになります。
張り替えは、ご自身でも可能。
襖は、襖紙が古くなったり汚れた時には、自分で張り替えることが出来ます。特別な技術は必要ありません。ふすま戸は簡単に桟から外すことができますので、場所を移動して作業することができます。実は、周りの枠も簡単に外す事が出来ます。お気に入りの襖紙を手に入れて、ご自身で張り替えをしてみてはいかがでしょう。襖の汚れは、襖が空気をキレイにしてくれた証拠。リフレッシュしてみましょう。内部構造がしっかりしていれば、それこそ何代にもわたって使っていただけます。こまめに手入れをして、大切に使いましょう。
和襖の構造
古来から伝わる和襖は、引手板・横框(打子)・堅框・堅子(堅組子)・横子(横組子)・力子(力骨)など、名称は地域や製作所 によって若干異なるものもありますが、数多くの部材を組み合わせて、まずは骨組みが作られます。木枠は組子構造と呼ばれる作 りになっており、表・裏を交互に組み上げた「地獄組み」と呼ばれる、一度組んだら離れにくい構造をしています。 そして、その上から紙を張って普段目にする襖の姿へと仕上げられていきます。骨縛り・打ちつけ貼り・裏貼り・べた貼り・袋貼り・上貼りという作業工程を経て、襖は完成に至ります。下地に徐々に紙を重ねていき、最後に仕上げの上張りを行うこの工程は、次に張る紙の材質によって糊の量・張り方を変えるといった職人技を必用とします。そして最後に縁・引き手を取り付ければ、襖は完成します。和襖は、周囲だけに糊を塗り、ウケ紙と呼ばれる下地の紙を貼り釘で留めています。この時中央部は浮いた状態になりますので(浮かし貼り)、その上に襖紙を貼ると、内部に空気の層ができ、保温性、調湿性が生まれるのです。襖紙の材料には、現在は鳥の子紙という上質の和紙か織物が使用されています。また、襖紙は張替えも可能です。この張替えには、特別な技術は必要ありませんのでご自身でも行えます。表張りを変えて楽しんでみてはいかがでしょう。
量産襖の構造
最近は木材を芯に和紙を貼って作られる襖は数少なくなってきました。今よく作られているのは、段ボールやペーパーコアを芯としている物や、発砲系ふすまといわれる発泡プラスチックをベースにしている物です。木材を必要としないぶん接着にも釘を使わず、ボンド接着で済ますことができるようになりました。こうして作られた襖を、一般的に「量産襖」と呼びます。
量産襖には、安価で品質が均一、基本的に軽くて扱いやすいものが多いというメリットがありますが、糊で一面をべた塗りにする ので、和襖のような、保湿性や空気清浄の機能は期待出来ません。また、ボンドで襖紙を接着してしまっているので、張り替えも できません。襖紙には、汚れや濡れに強いビニールのクロスが用いられることもあります。一概に和襖が良くて、量産襖が悪いと いう訳ではありません。用途や求める機能や好みに応じてご選択ください。
襖の引手
ふすまを開閉する際に、手を掛ける部分のことを引手と言います。金物引手と木材引手があり、金物引手の場合は金・銀・黄銅・ 赤胴・洋白・鉄・真珠などで出来ています。木材の場合は、竹やコクタンが多く用いられます。装飾としても重要な部分ですので、 風合いがしっかりとしていて個性的な素材が人気です。
襖の縁はただの飾りではありません
ふすまを開閉する際、引き手に手をかけて少し開いた後、自然と手は縁に移り、襖を開けるという動作をするのが自然です。また、 茶道などでも「縁を持って開閉する」というのが作法とされています。人の手が触れるのは、引き手よりも縁の方がずっと多いの です。そのため、手あかなどで襖紙を汚したり、傷めたりすることが無いよう、襖には縁が取り付けられているのです。開閉の際 には直に襖紙に触らないように注意しましょう。縁の材料は、今も昔も木材で出来ている事がほとんどです。一時期プラスチック や金属性のものも出回ったのですが、建てつけが悪くなりやすく、結局木製に戻ったのだそうです。
和襖は、紙と木で出来ています。更に、襖絵が描かれているものもあります。ですから、水気は厳禁です。最近は、ビニールクロスタイプの襖紙もあり、その場合は水拭きしても良いのですが、多くの襖は濡れた雑巾でこすったりすると、襖紙を傷めます。襖絵が台無しになるのはもちろん、最悪の場合破れてしまいます。襖が水を吸うと、せっかくの襖の調湿機能(湿気を吸ったり、吐き出したりする機能)を失わせ、場合によってはカビの原因になってしまいます。
襖掃除は、襖紙の交換が手っ取り早いです。
襖を「拭くのは駄目」というなら、どうやって掃除したらいいのかといいますと、最も手っ取り早いのは襖紙を交換することです。
襖紙の定期的な交換は、襖本体を長持ちさせることにもつながります。この、襖紙の交換は、実は職人さんでなくても簡単に行う 事が出来ます。お気に入りの襖紙を用意して、ご自身で交換してみてはいかがでしょう。
しかし、襖紙の一部だけが破れてしまったり、一部だけ汚れがついてしまったりしたときには、どうしたら良いでしょう?そのた めに襖紙を貼り替えるのはちょっと勿体ないという時には、問題の部分だけ襖紙を切り取って、パッチワークのように新しい紙を 貼りつけてはいかがでしょう?最近では、桜花型など、様々なデザインの補修用の襖紙が売られています。手軽に使えるシールタ イプのもの、自由に切り取って使えるものなどもあります。一度探してみてはいかがでしょう。
身近なものでお 手入れしましょう
ふすまの引手部分は、汚れがつきやすいところですが、デリケートな襖紙接していて、水拭きなどの掃除がしにくい部分です。こ の引き手のお手入れには、消しゴムが有効です。ちょっとした汚れなら簡単に消し取ることができます。また、襖の桟のお手入れ には、輪ゴムが便利です。輪ゴムを桟の上に置いて、襖を何度か往復させてみてください。輪ゴムが桟や襖のしたのホコリや汚れ を巻き取ってくれ、簡単にキレイになります。また、襖のすべりが悪くなってきたと思ったら、桟に蝋燭を塗ってみましょう。色 付きの蝋燭では、桟に色が移ってしまいますので、白(無色)の蝋燭でなければいけません。蝋燭に火は付けずに、クレヨンで色 を塗る要領で、桟にこすりつけて下さい。驚くほど滑りが良くなりますし、襖や桟の保護にもなります。
Q.襖紙がたるんでいるけど大丈夫?
A.襖の持つ調湿性のためで、湿気をたくさん吸収すると、次第にたるんできます。襖が正常に機能している証拠でもありますが、長い間このままだと、襖自体が傷んでしまう原因になります。部屋の換気をしていただけば、襖は湿気を放出して、自然に元のピンと張った状態に戻ります。襖は、湿気を吸収することで、お部屋を結露やカビの発生から守ります。梅雨時に襖紙がたるむのもこのためです。天気が良いときには換気を行って、常に襖が正常に機能出来るようにしておきましょう。
Q.引き違いで襖同士がこすれてしまうのはどうして?
A.上記でご説明した通り、襖が湿気を吸収し過ぎて、襖紙がたるんでいるのが原因だと思われます。そのままご使用いただくと、 襖紙がこすれ合って傷んでしまいますので、出来れば片方をはずして干しておくことをおすすめします。きちんと乾燥させれば、こすれあう事はなくなると思います。
Q.襖紙が変色してきてしまいました。対策は?
A.襖紙の変色や、次第に汚れてくる原因は、襖が呼吸しているからです。襖は構造上、多くの空気を含み、部屋の湿気を調整する役割を持っています。そのため、空気中の汚れをまるでフィルターのように吸着します。長く使っている襖の変色は、襖が正常に機能し、空気を浄化している証拠です。襖紙は、障子紙と同様、消耗品と考えて、変色が気になるようになったら新しいお気に入りの襖紙に張り替えてはいかがでしょう。お部屋の雰囲気が変わるだけでなく、襖の調湿や浄化の機能も高まります。
Q.張替え時期の目安は?
A.部屋の使い方によりますので一概に言えませんが、5年が一つの基準です。タバコをお部屋で吸われる場合は当然もっと短くなります。逆に、客間などのように普段人の出入りが少ない部屋、直射日光が入らない部屋などではもっと長くなります。汚れやすい部屋なら3~4年おき、汚れにくい部屋でも6~7年というのが目安かと思います。
伝統的な手すきで作られた『鳥の子紙』。
襖に使われている紙は、大きく2種に分類されます。
一つは、一般的な襖紙である鳥の子紙と呼ばれているものです。そして、もう一つが織物紙です。鳥の子紙は、元々雁皮紙のことを指していましたが、鶏卵の殻の色に似ていることから、鳥の子紙と呼ばれるようになりました。伝統的な手すき技法を今に伝える鳥の子紙は、今でも重宝されています。
紙より強い『織物紙』。
もう一つは、織物紙と呼ばれています。織物紙は、織物に裏紙を貼り付けて作られています。繊維がしっかりとしていて破れにく いという特徴があります。編み込みの違いによって浮きあがる絵柄に異なった風合いが生まれ、その美しさには目を見張るものが あります。手の込んだものはどうしても高価ですが、天然繊維で編み込まれているものは特に、一点一点違った表情を持っていて 魅力的です。低価格なものはレーヨン糸を一緒に編み込み、模様は後から機械で印刷するという製品もある様です。
襖紙に用いられる和紙は、伝統的な手漉きによるものと、機械漉きのものがあります。鳥の子については手漉きのものを「本鳥の子」機械漉きのものを「鳥の子」と呼び、区別しています。
本鳥の子
鳥の子は抄造機という紙漉き機を用いて漉きます。紙料はさまざまで、雁皮・三椏・パルプを使ったものがあります。
紙の肌合いが手漉きに近いものができ、その均質さから用途によっては手漉きに劣らないものが製品となります。
上新鳥の子
鳥の子の普及品です。全て機械漉きですので、均一で比較的低価格という特徴があります。
鳥の子の肌合いを生かした無地のものから、機械漉き模様のもの、後加工で模様付けしたものなど、種類が豊富なのも魅力です。
こうした特徴から、一般住宅や集合住宅などによく用いられ、「上新」とも呼ばれています。
新鳥の子
襖紙の中で最も廉価な製品です。製紙から柄付けまで全て機械生産されています。紙は特殊な抄紙機で漉いた再生紙で、輪転印刷 機での柄付けの後にエンボス加工をして風合いを出します。
量産性と施工性の良さから、一般住宅や集合住宅などによく用いられています。下地の透き止めのため紙裏が茶色のものが多く「茶 裏」ともよばれます。
織物紙は天然素材用いた伝統的なのものと、合成繊維を用いたものに分けられます。天然素材のものは主に高級な無地として用いられます。天然素材という性質上、合成繊維に比べて均一性は低く、一枚ごとに織り上がりの表情が違います。この表情の変化も、ぜひ楽しんでいただければと思います。
上級織物紙
高品質な織物紙です。主としてドビー織りなど、縦糸・横糸ともに糸目が詰んでいるところに特徴があります。絵柄も一枚ずつ丁寧に手加工で描かれます。
中級織物紙
レーヨン糸(長繊維)等を使用した、中級の織物紙です。このクラスでは、手加工のものや、最新の印刷技術を駆使した、変化がある絵柄が好まれているようです。
普及品織物紙
レーヨン糸やマニラ麻糸を使用した低価格品です。種類の豊富さに特徴があります。絵柄は輪転、オフセット、スクリーン印刷機などで印刷加工されます。
襖は、8世紀から9世紀の頃、几帳、衝立、屏風、明障子など、寝殿造内部の調度品から生まれた日本独自の間仕切建具です。
襖の特徴は、軽く、引違いで動かせ、表の紙を張り替えることで大きく雰囲気が変わることです。
現在の住宅様式の中では、和室の減少や建築構法の変化により、襖の必要性が減少しつつあるもの事実です。また、襖のイメージも大きく変わってきています。今後、新しい時代の住宅に合った襖の在り方を創意工夫していく事が望まれます。
襖とは
襖(ふすま)と障子は、現在私たちが使っている意味とは違う物を指している言葉でした。
まず、障子とは本来、間仕切り用の建具全般の事を指しました。そのうち、組格子の両面に紙や布を張ったものを襖障子と言いました。この襖障子の中で、特に薄紙を張って光を通すものを明障子と呼び、それが今は一般的に障子と呼ばれているものです。
そして、もともと襖障子と呼ばれていたものの中で、明障子以外の物を今では襖と呼んでいます。襖は今でも襖障子と呼ばれたり、 唐紙障子、唐紙と呼ばれたりもしています。
古くから使い続けられる、日本生まれの襖。
国宝や文化財に指定されるような日本古来の建築物と、今の私たちの住まいの中で共通して使われている建具は、唯一、襖だけと言っても過言ではありません。ちなみに障子という名は中国伝来で、元々は境界に用いられる壁や垣の事で、日本でも同じ意味で使われていました。しかし、襖は日本生まれの、日本にしかない言葉です。衾所(ふすまどころ)と呼ばれた寝所にその語源があるとされています。
簾・屏風から襖の誕生へ
古くからと先に述べましたが、襖の始まりは平安時代です。平安時代の貴族の住宅は、部屋に仕切りを作らずに通気性を優先した、 寝殿造でした。そこで、空間を仕切ったり、目隠しをするために、屏風や簾が使われており、当時、これら部屋の間仕切りに使う建具を総称して「障子」と呼んでいました。その中から、木と紙や布を材料として作られた間仕切りとして、襖障子(今で言う襖)が発明されたのです。当初は絹などを貼り、寒さをしのぐために柱と柱の間にはめ込んで使われました。簾や屏風は持ち運びが容易なため手軽で便利ですが、柱間にはめ込むための木枠を有する襖の方が格式が高く、しっかりとしたものとして扱われました。
つまり、ふすまは簾・屏風から進化したと言えます。
襖の骨組
襖は、引手板・横框(打子)・堅框・堅子(堅組子)・横子(横組子)・力子(力骨)など、名称は地域や製作所によって若干異な るものもありますが、数多くの部材を組み合わせて作られています。しかしこれは、あくまで骨組です。ここから紙を貼っていき、 我々が普段目にする襖の姿になります。
骨組みに紙を貼る
骨縛り・打ちつけ貼り・裏貼り・べた貼り・袋貼り・上貼りという作業工程を経て襖は完成に至ります。下地に徐々に紙を重ねていき、最後に仕上げの上張りを行います。それぞれの紙は、次に張る紙の材質によって糊の量・貼り方を変えるといった職人技を必用とします。そして最後に縁・引き手を取り付ければ、襖の完成です。
襖の進化
本来は、たくさんの部材を組み合わせて作られてきた襖ですが、近年では、ダンボールや発泡スチロール・ベニヤ板・チップボール等を用いて、骨組を作る場合が有ります。全てを木で作るよりも軽く・簡単で安価に仕上がります。
動く間仕切り
襖は、和風住宅の部屋同士を仕切る建具です。もともと寝殿造の住宅で大きな空間を仕切るために作られ、その後の建築様式にも部屋同士の間仕切りとして利用されてきました。取り外しができる襖を部屋の間仕切りとして使うことで、自由に部屋の大きさを変えられます。このように空間の形を柔軟に変化させられることが日本の住宅の特徴の一つであり、それを実現させているのが、軽くて自由に動かせる襖の存在のおかげなのです。
また襖は、保温性や調湿性、有害物質を吸収する空気の清浄能力があります。そのため、冬には寒さを防ぎ湿度を補い、夏には室内を涼しく保って湿気を吸収してくれます。襖を間仕切りだけでなく押入れに使うのは、湿気対策としてとても有効だからなのです。これが、高温多湿の日本で、襖が長く使われている大きな理由の一つなのです。
部屋同士を仕切ること以外にも、襖には室内装飾としての役割があります。いわゆる襖絵は、日本の美術の一つのジャンルとして確立しています。襖絵の存在は和室の雰囲気を引き立てます。
絵を描けば芸術品に
平安時代の貴族の住宅は、部屋に仕切りを作らずに通気性を優先した、寝殿造でした。そこで、空間を仕切ったり、目隠しをするた めに、屏風や簾が使われており、当時、これら部屋の間仕切りに使う建具を総称して「障子」と呼んでいました。その中から、木と紙や布を材料として作られた間仕切りとして、襖障子(今で言う襖)が発明されたのです。当初は絹などを貼り、寒さをしのぐために柱と柱の間にはめ込んで使われました。
その後、唐紙(中国から輸入された厚手の紙)が使われるようになり、現在のような襖の形が出来上がりました。今でも、襖の事を唐紙と呼ぶ方もいらっしゃいますね。またこの頃、襖に絵が描かれるようになりました。鎌倉時代には、襖は引き違いで使われるようになり、開け閉めが容易になり、現在と同様の使い方が確立します。書院造りが完成した桃山時代には、襖は、寺院・城などで高価な和紙を大量に使って装飾され、芸術として襖絵というジャンルが確立しました。当時の作品の多くが現在も残っています。
和襖と量産襖の作りと性能の違い
現在の襖には、大きく分けて和襖と量産襖があります。これらは内部構造から違います。
和襖の木枠は組子構造と呼ばれる作りになっており、表・裏を交互に組み上げた離れにくい構造をしています。一方量産襖は、段ボール等の均質構造材を使います。このように、和襖は周囲の枠(かまち)と木材で組んだ中子(内部の部材)からできていますが、量産襖はダンボール、発泡プラスチックで出来ています。この違いは、襖紙の貼り方にも影響します。
和襖は、周囲だけに糊を塗り、ウケ紙と呼ばれる下地の紙を針釘で留めます。この時中央部は浮いた状態になりますので(浮かし貼り)、その上に襖紙を貼ると、内部に空気の層ができ、保温性、調湿性が生まれるのです。また、張替えも可能ですので、表張りを変えて楽しむ事が出来ます。しかし、量産襖は、糊で一面をべた塗りにするので、和襖のような機能はなく、張替えもできません。
襖紙の材料には、現在は鳥の子紙という上質の和紙か織物が使用されています。量産襖には、ビニールのクロスが用いられることもあります。
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