美濃雑紙
美濃雑紙は、明障子紙の代表として評価されている障子紙です。室内を明るく保つ、採光を目的とした明障子には、透光性高い薄い紙が要求されますが、一方で破れにくい粘り強さが必要です。また価格も安い物が好まれます。壇紙(だんし)や奉書紙、鳥の子紙などで、このような条件を満たす事はできません。障子紙としては、雑紙や中折紙など、文書草案用や包み紙などの雑用の紙が用いられてきました。中でも美濃紙は美濃雑紙と呼ばれて、多用途の紙として最も多く流通していたので、障子紙としても多用され、美濃雑紙が明障子紙の代表として評価されるようになったのです。


書院紙
明障子は書院造様式によって普及したため、「書院の明障子」といわれました。そこから明障子に貼る紙は、書院紙と呼ばれるようになりました。書院造は、障子の格子桟の寸法が地方によって異なっていますた。そのため、書院紙は全国ほとんどの紙郷で漉かれていたにも係らず、その土地の寸法に合った紙がその産地周辺で消費され、市場で流通することがありませんでした。
書院紙として流通したごく一部の例としては、「和漢三歳図絵(わかんさんさいずえ)」(寺島良安編 1713 年)に、「濃州寺尾よ り出るものもっとも佳し。防州之に次ぎ、奥州岩城、野州、那須、芸州広島、また之に次ぐ。」とあります。この他にも、因幡、甲斐、肥後、土佐、信濃などで産した書院紙が市場で流通していました。この中では、美濃国、甲斐、土佐の書院紙が今日でも変わらず障子紙の産地として有名です。また、「新選紙鑑(かみかがみ)」には、書院紙として美濃書院紙と美濃紋書院紙、安芸の諸口紙そして因幡書院紙が上げられていますが、中折紙、三つ折紙、大判紙なども書院紙として利用されました。明治初期の「諸国紙名録」には多くの紙に障子用と注記されているので、当時でも全国の各地でさまざまな地域の建具寸法に合わせた書院紙が漉かれ続けていたことが分かります。


美濃書院紙
「和漢三才図会」の障子の項には、「濃州寺尾より出るものもっとも佳し。故に呼びて美濃紙と称す。以て書籍を写し書翰を包み、 障子および灯籠を張るのに 之にまさるものなし。」とあります。濃州寺尾は現在の岐阜県武儀郡武芸川町寺尾にあたります。「新選紙鑑(かみかがみ)」には幕府ご用の障子紙として、市右衛門、五右衛門、平八、重兵衛の4 人の名をあげています。このほかにも濃州牧谷、洞戸、岩佐、谷口のものも良品としています。美濃書院紙という名は、書院造とともに発展し、明障子に最も適した紙として定着しました。
明治初期の「岐阜県史稿」には、二つ折美濃、三つ折美濃という紙があり、明治九年(1876 年)の「米国博覧会(フィラデルフィ ア万国博覧会)報告書」には、「二ツ折ハ障子二格間(格子間)ヲ貼るニ便シ、三ツ折ハ三格間ヲ併セテ貼ルの料トス。」とあります。 書院紙は、障子の格子幅に併せて漉かれますが、障子の格子の幅は各地域バラバラで規格が統一されていませんでした。たとえば、 美濃書院紙の場合、尾張・美濃用は縦寸法が九寸三分、三河用は八寸三分、伊勢用は八寸二分でした。此の各地の格子の幅のまち まちの伝統は、今日でも受け継がれています。


模様入りの障子紙
障子紙の中に、紋書院紙と呼ばれる透かし文様が入ったものがあります。「万金産業袋」(享保十七年刊 三宅也来)の美濃国のなかに「紋障子」とあり、「美濃明細記」(元文三年刊 伊藤実臣)には、武儀川流域で紋透かし紙を漉いていたとあります。また「難波丸項目」(安永六年刊)に紋美濃そして同年刊の「新選紙鑑(かみかがみ)」のなかの美濃産紙の項に「紋障子」とあります。この紋書院紙は、美濃のほか筑後柳川や肥後でも紋書院紙を産し、『諸国紙名録』には、肥後産紋書院紙に「スカシヨシ」と注記されています。
美濃紋書院紙では、鹿子(かのこ)・紗綾形・菊唐(から)草・七宝 ・亀甲(きっこう)などの美しい紋様が漉き込まれ、障子以外にも行灯や灯籠などにも用いられました。近年美濃市で作っている落水紙(美光紙ともいう)には、紋様を入れた紋書院紙風のものもあります。
紋書院紙のほかに紋天具(てんぐ)帖というのがあります。これは極薄の天具(てんぐ)帖紙に、透かし紋様ではなく、胡粉(ごふん)の具などで木版摺(す)りしたもので、のちに型染めで捺染するようになりましたが、やはり光を透かして美しい紋様を浮かび上がらせて楽しむもので、灯籠などに用いられました。













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